●2011年5月19日は、
一年がかりで作りあげた初の著作集『拡張するファッション』の見本誌が届き、
特設サイトが立ち上がり、刊行記念イベントも告知されたという、
3つの出来事が集中した、記念すべき日になりました。

特設サイトはこちら
○一方で私の個人的な仕事のなかでは、2010 年の年末から今年にかけて、
いくつかの新しい執筆プロジェクトがありました。
それは一つ一つがとても貴重なもので、
自分にとってもとりわけ重要な執筆の機会になりました。
その場をくださったそれぞれの方にお礼を申し上げたく、
また媒体諸氏にも感謝を抱きつつ、最近の執筆を振り返ります。
2011年2月〜3月


美術手帖のホンマさんの原稿、やっと入校に至る。
原稿をかいて、写真のレイアウトとあわせ、そこで少しずつ写真とのつながりを考えて訂正したり、
を何度か繰り返したので日づけは忘れてしまった。
3月17日の発売予定日直前、3.11の東関東大震災が発生した。
その後多くの人と同様に不安な日々を過ごしたが、雑誌が発売予定日に書店についに登場したときは、本当にうれしかった。
執筆中、何度もかつてない肩こりに襲われたが、
この1万字原稿を書けたことは本当に有意義な体験だったと、
金沢21世紀美術館のあと、東京オペラシティ展を見て、サテライト展をいくつか見たあとの今も、強くそう思っている。
ホンマさんのように、周囲の人に「問い」を発し続ける人は、批評活動が目につきにくく、
消費を軸にすべてが動いていくかのような<東京>のクリエイティブシーンにおいてはとりわけ、稀有な存在だ。
そういう作家と同時代に生きているということは、何と楽しいことだろうか。
2011年2月末以降


また、突然のメールがきた。
なんと、あのおしゃれの総本山であろう、マガジンハウスの『GINZA』編集部からのメールだった。
実はフリーになって10年間、これまで一回もお仕事したことのない媒体だったのだ。
でも「リニューアルがある」ということで、急きょ東銀座のマガジンハウスまで、出かけていった。
数回しか来たことがない会社なので、しばらく受付で周囲をキョロキョロ見渡した。
あたらしく編集長に就任される中島敏子さんにお会いした。
彼女はとてもカルチャーに詳しく、私が舌を巻くくらい。
以前私に貼られたことのある「サブカル好き」というレッテルは、
本当はこういう方のためにあるべきなのではと思うくらいで、感動した。
リニューアルした誌面を手にしてさらに感動した。痛快だった。久しぶりに雑誌から衝撃を受けた。
ADは私が10年前に『パリ・コレクション・インディビジュアルズ』(リトルモア)を2冊、
一緒に作った旧友の平林奈緒美さん。彼女の良さがとても生きている。
「個」をもつクリエイターが、日本のメディアにおいて、こういう生かされかたをするケースは、珍しい。
『GINZA』5月号からアート欄で連載させていただいている私は、
毎回他の方たちの痛快な原稿を読むたびに、ますますはげまされ、自分も頑張って書こう! という決意を新たにしている。
ファッション誌というもの、ファッションというものが、新たな拡がりをもちうる可能性を、感じている。
2011年4月某日


『服部一成グラフィックス』が届く。あまりの豪華な内容にくらくらする。
ホンマさんの撮影、仲條さんの文章、蜂飼耳さんの文章、服部さんの作品群や服部さんの作品解説……。
その中に、自分の原稿が入っていたり、
そして服部さんのお仕事として過去の『here and there』のビジュアルが入っていることがとてもうれしく、
光栄で、ちょっと信じられない。